アクアポートのある現場から④|集落営農と個人経営。二刀流を支える合理的アプローチ

高本祐輔

2025.12.1

稲作の重要な工程であるとともに手間のかかりどころでもある水管理。その省力化に貢献するのが北菱電興の水田用自動給水機「アクアポート」だ。上限/下限用のふたつのセンサーで水位を感知し、自動での給止水を実現。電池で駆動し、設置も簡単。あえて機能をシンプルにすることで実用性と低価格を両立させている。
では現場での実感はどのようなものなのか。実際にアクアポートを導入した稲作農家を訪ね、これまで抱えていた課題と導入のきっかけ、導入前後の農作業の変化や今後の展望などを伺った。

 「この辺りがコシヒカリ。もうそろそろ穂が出て花が咲く時期です」。田んぼのあぜ道を走る軽トラックの車内では、高本祐輔さんによる即席のレクチャーが行われていた。

 

高本さんは石川県白山市でエンドウやナス、ブロッコリーなどを生産する個人農家。また一方で、農事組合法人あけぼの営農組合という12件の農家からなる集落営農組織にも所属している。集落営農の圃場は近隣地区の道法寺町と坂尻町を合わせて約30ha。25haが水稲、残りの5haで大豆を作付けしている。

兼業農家に生まれ育った高本さんは、大学時代にスキー場でアルバイトをしていた際、農閑期にスキー場で働く農家と知り合った。農業とスキーという季節と自然を相手にしたメリハリのある働き方に魅力を感じるとともに、高本さんは自身の趣味である、スキーを自由に謳歌する「半農半スキー」というライフスタイルに憧れを抱くようになった。

 

大学卒業後の高本さんは、消防職員のかたわら、非番や休日に集落営農の農作業を行うライフスタイルへ。2016年に圃場の水管理を親から交代し、約5ha分の水管理と消防の24時間勤務の両立を日々こなし、20歳からはJA青壮年部に加わり地域の子供たちへの食農教育活動などを行ってきた。そして2018年、JA石川県青壮年部協議会(県青協)の副委員長に就任。その翌年には県青協委員長という重責を担う立場となった。

全国を見ても、兼業農家での各都道府県青協の代表はいない。不安の中での就任であったが、「この県青協委員長の役職を通じて、全国各地の農家から直接、営農情報や技術を聞くことができ、多くの仲間が作れたのはとてもよかった」と高本さん。この経験を糧として2022年、高本さんは妻と二人で満を持して新規就農に踏み出した。

 

ただしこの選択は、決して簡単なものではなかった。所属する集落営農の構成農家は兼業がメイン。専業農家は少数で、定年退職後の農家に限られた。要するに集落営農一本で生計を成り立たせることは難しかったのだ。そこで高本さんは県の農林事務所やJAと相談し、集落営農と個人経営の“二刀流”を決意。従来の集落営農での水稲・大豆に加えて、個人で野菜の生産も手掛けることで経営の安定化を目指したのである。

二刀流の肝は、いかに作業の省力化や効率化をするという点に尽きる。例えば、早朝から始まるエンドウやナスの収穫は、水田の水管理と時間が重なってしまう。そこで高本さんが目をつけたのが、北菱電興の「アクアポート」であった。

 

「水田の水管理を自動化してくれるアクアポートの存在は、それ以前から知っており、国の新規就農支援制度を活用し、アクアポートを15台をまとめて導入しました」と高本さん。二刀流のスタイルは、アクアポートの導入がきっかけとなったのだ。

消防職員時代の水田の水管理は夕方に入水し、翌朝に止水して出勤するのが日課。集落営農のため圃場は集約されているとはいえ、軽トラックで巡回して乗り降りしながらの水管理は1時間を要し、大きな作業負担となっていた。特に交通量の多い県道沿いの圃場は車を横付けできず、歩いての確認で、ことさら不便を強いられていたという。

 

「アクアポートを設置してからは本当に楽になりました。軽トラをゆっくり走らせて、車窓から機械の動作と水位の状態を目視確認するだけでいい。異常が無ければ、乗り降りの必要がなく、水管理はドライブスルー。おかげで、これまで1時間の作業が20分程に短縮されました」

 

その便利さを実感した高本さんは、さらなる省力化を求めてのちにアクアポートを追加導入。現在は高本さんが管理する38枚の水田のうち、実に35枚に設置済みだという。

もちろん二刀流の実現はアクアポートの力だけではない。そこにはJAや集落営農の存在も大きく関わっている。

 

「集落営農での米の乾燥調製はJAのライスセンターに出しています。これにより稲刈りが終われば、稲刈り後の圃場を利用した秋作ブロッコリーの生産に専念できる。米も野菜もJA出荷が主体で、ほかにも少量多品目野菜などをJAの直売所に出荷しています。販売や流通などはJAのスケールメリットを活用することで、生産に専念することができるんです」

 

一方で農地や農業機械を共同利用する事ができる集落営農の存在もまた、生産コスト低減への恩恵は大きい。基本的に集落営農の圃場は各構成農家が個人で管理しているが、自分が管理する以外の圃場も活用するような融通を利かせられるのも、個人の営農にはない利点だ。

従来のJAや集落営農のメリット、そしてアクアポートのような省力化を実現する新たな技術をうまくかけ合わせ、高本さんは集落営農での水稲・大豆の生産と、個人での野菜の生産といった、二刀流の営農を成立させている。

 

それは安定した収入を他方で得ながら農業に勤しむ兼業農家とも、加工や販売・流通といった6次産業化へと舵を切る農家とも異なる、言わば第三の道。周囲を見回しても実践者は高本さんのみに限られるが、似たような出自を持つ兼業農家にとっては新規就農を後押しする心強いロールモデルとなるに違いない。

 

最初にして最大のハードルは、「農業だけでは食っていけない」と引き留める周囲の声にどう打ち克つか。「自分は冬に思い切りスキーをしたいという、半農半スキーというライフスタイルに憧れていましたから」。自由を求めて専業農家へ。スキー場でのアルバイト時代に憧れた理想の生き方は、いま高本さんの手の中にある。


■今回の農家さんが導入したモデルは……

【製品名】アクアポート(AP-001)
製品詳細はこちら
https://www.hokuryodenko.co.jp/aquaport/

【取材協力】
高本祐輔
住所/石川県白山市道法寺町

■野菜直売
JA白山 ファーマーズマーケットよらんかいねぇ広場
住所/石川県白山市井口町に58-1
電話番号/076-273-3002
https://www.ja-hakusan.jp/products/yorankaine

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